HELIKUTU KOBO

へりくつ工房はカードゲームを作ったり、 そうでもないものを作ったりしています

ギミックとフレーバー

※本記事は、 Board Game Design Advent Calendar 2015の第21日目の記事として書きました。

こんばんは!天空 薙と申します。
以後を見知りおきを…

今回は、Board Game Design Advent Calendar 2015という企画に乗っかって、なんかボドゲデザイナーっぽいことをのたまってみようかと思います。

自己紹介

この記事でここに初めて来てくださった方もいるのではないかと思うので、この天空 薙っていうのはどういったやつなのか?
というところから行こうかと思います。

2012年12月にコミックマーケット83で、「名状しがたいクトゥルフスープのようなもの」で初出展
それから現在まで、HLKT工房名義で8作、第16回ゲーム・フィールドゲーム大賞に1作出しております。
自分なりの代表作は「わんおぺ

ちなみにゲームプレイするのも大好きで、
特に「アグリコラ」は不朽の名作にして、人生の目標だったりします。
アグリコラの愛については先日別のAdvent Calenderで記事を書いているので、
興味があればそちらも見てください。

後悔していることから

これから、「フレーバーって、ギミックって」という話をしていこうかと思いますが、
その前に一つ、お礼と懺悔させてください。
今回の企画を立ててくださった”I was game”様にはこの場を借りてお礼を申し上げます。
この企画を発見した時に、カレンダーの空きが確か一つしかなく、
即決で埋めてしまった上に、したのようなツイートをしていたのですが、、、

ここ数日めちゃくちゃ後悔しています。
だって、埋めなければ自分よりすごい人がきっとすごい記事を書いてくれるかもしれないんですよ!?
そう思ったら、惜しいことをしたと思わなくはないです。

まぁそれはそれ、これはこれ、やると言ってしまったので、自分のできる限りのことをしようと思います。

この記事の内容について

現段階で10弱のゲームをまがいなりにも作ってきたことを通して、
今まで、ゲームデザイナーの先輩方が何かを話す時によくテーマにしている
「アナログゲームにおけるテーマとメカニクス」の局所的な話をしていこうと思います。
自分自身もゲームを作る際に気にするものではあるので、それにもついていろいろ語れたらなぁと思っています。

本記事の用語に関して

もっとも、テーマって?メカニクスって?という話があると思いますので、
この記事で言う所のテーマとかメカニクスってどういうことなどみたいなことを先に定めておきたいと思います。

テーマ

ゲーム上取り払ってもゲームとして進行するものの総称。
取り払った時にそのゲームが面白いかは別問題ですが。

メカニクス

ゲーム上取り払ったらゲームとして成り立たなくなるものの総称。
そのゲームのルールによって、定められたコマの動きやカードの配置、並べ方なんかがこれにあたります。
ゲームの開始状態、進行手順、終了条件の三つがあれば、最低限成り立つと思います。
ただし、これだけでゲームが面白かは(ry

ギミック

本稿の主役、メカニクスの一部分を指します。
ルールの一部分とも言えます。
あるコマの動きの一つや、カードの効果一つなどの単位を想像していただけると
わかりやすいかと思います。

フレーバー

テーマの一部分。テーマを表す為の小道具。
一つのカードや一つのコマに付随するものを想像してください。
フレーバー単体でもいい味を出す場合はあるますが、
それ一個のみをとったのでは全体が見えない…そんなものです。

ギミックとフレーバーどっちを立てるべきか?

「テーマとメカニクス」どちらを立てるべきかという議論はよく聞かれるものだったりします。
遊星からのフリーキックさんが出している「テーブルゲームデザインの本」という同人誌でも
1つのテーマとしてあげられているくらいです。
「ゲームとしての面白さ」という観点から、テーマとメカニクスこの二つがデザインの上で対立した場合、
どちらを立てるべきかという話ですね。
これに関する解答は今の所出ていない、、、というより解答はないと思います。
どちらを優先させるかがデザイナーの腕の見せ所だと思いますし、
そこに至るまでの過程などによると思います。

ことギミック、フレーバーに関しては若干毛色が変わるかなと思います。
あるギミックが欠落した、あるフレーバーが欠落した時、ゲーム全体としての影響の変化が小さいからです。

まぁここの部分のフレーバーをぼかしてもゲーム全体のテーマがぼけることは関係ないだろとか
ここのギミックはテーマやフレーバーと若干離反している感はあるけど、全体のメカニクスを引き立てるためには必要だろ!
みたいな話がなくはないからです。

抽象的な話をしていてもしょうがないので、例を出そうかと思います。
失敗例を出すのに、人様の作品から…というのもあれなので、手前味噌で申し訳ないですが、「わんおぺ」を使わせていただきます。
「わんおぺ」をテーマとメカニクスという観点から説明するとこんな感じになります。

わんおぺのテーマ

プレイヤーは牛丼チェーン店のアルバイトとなって、
”一人”で店の営業をしていきます。
ゲームはプレイヤーのシフトインから、店を閉店させるまでです。

わんおぺのメカニクス

ゲームのメカニクスとしては、
一番大きいのは「ソリティア(一人用)」であることでしょう。
毎ターン、場に追加されるカードに対して、
手札からアクションを選択していき、カードの位置、裏表を変化させながら
場の外へと処理していきます。
山札を切らすことなく、場のカードを処理し終えたらプレイヤーの勝利となります。

どこでギミックがフレーバーが衝突したか

このわんおぺ、自分的に残念な点があります。
それが、このゲームの終了条件です。
テーマを読んでいて、あれ?と思った方がいるかもしれませんが、わんおぺが騒がれた当時(最近は違う店舗が出てきていますが)牛丼チェーン店は24時間が普通であり、閉店ということをしません。
なのに、このゲームでは閉店をしてしまいます。

まぁゲームだから、、、みたいなことを言い訳がましく言いますが、これはまさにとってつけた設定だったりします。

ゲームのベータ版が完成した時に、実際にテストプレイに置いて、ゲーム終了直前に新たにカードが追加されないタイミングが存在していました。
お客様が切れて、あとは今いるお客様の相手だけすればいい!
という、”普通の飲食店”ではよくある光景なのですが、これが原因で最後の最後の消化試合のタイミングができてしまいました。
しかもこれが、たまに起こることではなく、たまに起こらない程度の頻度でです。

今考えればこの現象に対しての解決策があったのでしょうが、いろいろギリギリの日程で作っていた(そして、時事ネタは速さが命な)ので、幾つか思いついた案から、一つのギミックを取り入れ、ボード上にカードが追加されないタイミングというものをなくしました。
それに対してつけたフレーバーが閉店でした。

当時はいい解決作だと思ったのですが、実際説明してみると、そのとってつけた感じがものすごく、他にもっと何かあったんじゃないかと思ったりします。

なにがいけなかったのか

じゃあ、なにがいけなかったのか、直接的なものは最後に蛇足的につけたギミックとさらに蛇に羽までつけたようなフレーバーだったわけですが、
「最終調整において、新しいギミックを解決策としてつけてはいけない」
という単純な教訓として残しておけばいいのかというとそいういうわけではないと思います。

そもそも、この「わんおぺ」というゲームは、先にテーマがあって、それを表現するためのメカニクスを考えるという方法で作られました。
それにもかかわらず、最後の最後でギミックを優先してそれにフレーバーを付随させてしまった。
そういった作り方の問題かなーと思います。

どうするべきだったのか

テーマの「わんおぺ」をもっと掘り下げるべきだったのかなと思います。
テーマが「わんおぺ」なので、ソリティアゲームである。
牛丼屋をテーマにしたので、作業項目が幾つかあり、同時にこなせるものとこなせないものがあるみたいな大枠を埋めていったわけです。
ここで、テーマとして「なにがゴールだったのか」ということを考えていなかったのが問題でした。
このプレイヤーにとってのゴールは一体何だったのか、今考えられるのは、、、

  • 指定の時間まで終えて、店を閉める(これが実際に使った案、現実に剥離してる気がします)
  • 同僚(または上司)が助けにきてくれる
  • お客さんが途切れてそのうちに店を脱出する(嘘か本当かそんな笑い話がありました)
  • 力尽きて倒れる(明らかにゲームオーバー)

実際この辺の選択を誤った気がします。
時計マーカーみたいなものを用意して、その間しのいだら勝利!みたいなことにした方がより自然な解答だった気がしますし、時間までにどれだけカードを処理できたかということでスコアをつけることもできたかもしれません。
スコアリングは当時あまり意識していませんでしが、スコアがあると過去の自分とまたは他人との比較ができるので、何回も遊ぶ動機付けになっていいと思います。
その点についても失敗だったかな〜と思わなくはないですが、その辺もこの終了条件の曖昧さがあって、なにをどう評価すればよかったのかわからなかったということもあり、ゴールの設定が曖昧だった気がします。

自分なりに結論

テーマ、メカニクスに関しては、どちらを優先させるか、どちらかを諦めるかという話が往々にしてあると思います。

その上で、ギミック、フレーバーというそれぞれを細かくした視点であっても起こりうる気がします。

「わんおぺ」に関して言うならば、

「テーマ先行で製作していたものをギミックによって歪めてしまったための失敗」

だと思います。
もちろん面白いと言ってくださる人はいっぱいいますし、他の点でご指摘もいただきました。
自分なりの反省としてはこれだ!ということですね。

もちろん「テーマ先行だけどギミックを含めて良くなった例」なんかはあると思います。
でも、今回は本当にテーマというトップを決めて、その下にメカニクス、フレーバー、さらにその下にギミックという感じの力関係だったのに、それを最後の最後でひっくり返してしまった結果かなと思います。

  • ボードゲームでこう言う動作をしたときが最高に面白かったからその「ギミック」をコアにして
    「メカニクス」や「テーマ」を付随させる。
  • 小さな「フレーバー」(文章)から世界が広がって「テーマ」になって、それに「メカニクス」を付随させる
  • 大きな流れ(「メカニクス」)をうまく動かすために小さな「ギミック」を追加し、
    それにあった「テーマ」をつける
  • 「テーマ」を考え、それに「フレーバー」をつけて、さらにそれに沿った「メカニクス」、それを実現させるための「ギミック」を組む
  • いろいろなアプローチが考えられますが、途中でその方針を変えるとどうしてもそのゲームの軸がぶれてしまう気がします。
    ゲームを作る際にこのゲームはどこがコアなのか、それを見極めるとデザイン、テストプレイにおいても有益なのかなーと思います。
  • おわりに

    延々と能書きを垂れてきましたが、いやー慣れないことはするもんじゃないですね(汗
    ただ、今回のギミック、フレーバーを考えてくうちに自分がよく失敗するところ、自分が好きなゲームの作り方なんかを思い返すいい機会になりました。

    言いたいことが1/3でも伝わればいいかなーと思います。

    ここまで、駄文散文におつきあいいただきありがとうございました。
    この記事が皆様のボードゲームライフの一助になれば幸いです。

    HLKT工房は今後も面白いと思っていただけるようなゲームを発信していきたく、精進していく所存です。
    イベント等々でお会い致しましたら、ぜひ手にとってみてください。

    ルールがわからないんだけどーとかいうことがありましたら、下記の質問フォームやTwitterへ是非是非メッセージをお待ちしております。

    ということで、天空 薙でした!
    またどこかの機会にお会いできましたら、その時は宜しくお願いします。

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カテゴリ: 雑記

天空 薙

サークル代表(雑用)の天空 薙です。 イラストとデザイン以外の仕事を主にしてます

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