■この記事はなに?
この記事はBoard Game Design Advent Calendar 2023の22日目の記事として書かれました。
こんにちは。
初めましての方は初めまして、お久しぶりの方はお久しぶりです。
HLKT工房の天空 薙と申します。
以後お見知りおきを!
毎年参加させていただいているこの企画ですが、ゲームデザインよりも同人ゲームの頒布に関してが多かったので今年はゲームマーケット2023秋で頒布した「クソゲーRTA」デザイナーズノート的なものを書こうと思います。
誰かに読んでもらうよりも、自身の備忘録的な側面が強いですがよろしくお願いします。
この記事はざっくりと二部に分けております。
前半はシステムの話システムが1回転半ほど変わったので、その遍歴とそれぞれでどういう選択をしたかを書こうと思います。
後半はテーマの話
テーマ上「ゲームをする」ゲームになったため、どういう構造なのか、またキャラクターを発注するにあたって、どんな感じで設定を考えたのかみたいなのを書いていこうと思います。
■システムに関して
今回のクソゲーRTAにはざっくりと3つの期間が存在します。
それぞれの期間ごとのシステムが変わっているのでそれぞれでどうしたかったのか、その時の問題点などを思い出せる範囲で記載していこうと思います。
■期間①:クソゲーコンペ
このクソゲーRTAの構想自体は2021年3月にまでさかのぼります。
元々は小説家になろうで発表された小説原作で、週刊少年マガジンで連載中の『シャングリラ・フロンティア』の企画であるクソゲーコンペに応募しようとしたものが発端となります。
『シャングリラ・フロンティア』”七つの挑戦” プロジェクト始動!
残念ながら、このコンペには間に合わず一旦はお蔵入りすることになりました。
■期間②:みさき工房杯
翌年の2022年8月の『みさき工房杯』に応募しました。
(当時はクリムゾン ソード the gameという名称でした)
こちらで優秀賞を頂きました。(が、最優秀賞には一歩届かず)
最優秀賞とはならなかったものの自身で製品化を進めようと決めました。
ただ、この時点で2022秋と2023春向けはざっくりと走り出していたため、リリースを2023秋として、製作をはじめました。
■期間③:ゲームマーケット2023秋リリース版
そして、今回2023年12月にクソゲーRTAとしてゲムマ2023秋に発表いたしました。
実際に動き出したのはゲムマ明けの2023年6月からでした。
そして完成したものがこちら
ケースとパッケージがとても良い感じにできました!(自画自賛)
以下では、上記の三つの期間に関してそれぞれのシステムの遍歴をざっくりと紹介します。
(各期間内でもいろいろ変化はしております)
■期間①:クソゲーコンペ (〜2022.3)
■コンセプト
「ゲームの周回による最適化」
「バグの組み合わせによるコンボの気持ちよさ」
「資源超過、無限ループによるバースト要素」
■ゲーム内マップ
モノポリー的な周回可能な世界でループ
各マスで資源を支払い、報酬を得ます。
資源の支払いができなかった分マイナス点(時間経過)
一番マイナス点が少ない状態で一周できたプレイヤーが勝利
■バグ表現
1バグ1カード
プレイヤーが行動するとバグカードをランダムで獲得する
カード毎に発動条件があり、その発動条件を満たすと何かしらの効果を得られる
■ゲームの進行状況
順番に1プレイヤーずつターンを進行する
■ゲーム終了条件
1週を規定ターン以下でクリアする
■コンセプトの実現方法
「ゲームの周回による最適化」
→ランダムで手に入るバグを組み合わせて、文字通り周回毎に最適化を目指す形に
「バグの組み合わせによるコンボの気持ちよさ」
→資源数を少なくして、噛み合わせの良いカードや発動条件が緩いカードを多くして、カード枚数あたりの発動回数を増やすことでコンボ感を実現しました。
「資源超過、無限ループによるバースト要素」
→ここは一つ売りにしたかったポイントです。
前述のコンボの気持ちよさを追及しすぎると資源超過やカードの無限ループによってバーストしてしまうため、そこの調整が必要になるのがこのゲームの肝としたかった部分です。
(最終的には無限ループの要素が外れました)
■反省点、改良点
- バグの制御、運ゲー感
→増えるバグがランダムなため、運ゲー感がとても強かった。 - バグの管理が煩雑
→バグの枚数が多い上に、バグ毎に発動タイミングがバラバラであったため、管理がとても煩雑になってしまった。 - 終了タイミングの不安定さ
→終了条件が不明瞭だったこともありますが、プレイヤーがいつ終わるかの予想が付けづらく、あと何週すればよいの??となりがちだった。 - 無限ループの判定
→無限ループになっているのかどうかの判断が難しい…
■期間②:みさき工房杯 (〜2022.8)
■コンセプト
「ゲームが進んだ時の加速感」
「同じゲームを遊んでいる感覚がある」
「資源超過、無限ループによるバースト要素」
■ゲーム内マップ
スタートとストップを明確にした複数ルートのマップ
プレイヤーはエリアを選択しながら、移動先のエリアをクリアして、報酬を受け取ります。
今回は支払えるパターンが複数あり、少なくとも時間を消費することでクリアできるという形になっています。
■バグ表現
ゲーム内報酬の変化によるバグ表現
それぞれクリア時に獲得できる資源が変わってゆきながらインフレしていく構造になっています。
■ゲームの進行状況
順番に1プレイヤーずつターンを進行する
エリア毎に要求されている資源を支払う
足らない分失点
エリア毎指定された報酬をゲット
報酬は全プレイヤーで共有
このバージョンでは、プレイヤーごとのバグカードは存在せず、報酬の受け取りが変化していく形
■ゲーム終了条件
規定回数エンドエリアに到達(各プレイヤー1~2回)
■コンセプトの実現方法
「ゲームが進んだ時の加速感」
→各ターンで得られる資源がどんどん増えていく
「同じゲームを遊んでいる感覚がある」
→全てのプレイヤーが共有する報酬テーブルの変化によって実現
「資源超過、無限ループによるバースト要素」
→それを超えたときのバースト時および、報酬にジャンプ命令を入れることで報酬テーブルを周回する形にし、無限ループを発生させる。(実際には無限ループではなく、ループ発生時にバーストする形とした)
■反省点、改良点
- 収束性の悪さ
→バースト時にセーブポイントまで戻るというルールがあったため、バグが増えてくるとセーブポイントから抜け出せないというリアルバグのような挙動になってしまった。 - 戦略性の薄さ
→バグをプレイヤー全員で共有していたため、プレイヤーごとの選択の幅が少なく戦略性がなかった。 - 見通しの悪さ
→前のバージョンでもありましたが、いつ終わるかが分かりづらい部分があり、そこがストレスでした。 - 報酬の煩雑さ
→前のバージョンのバグの管理よりは改善したものの、依然としてここでクリアしたときに何が得られるかが分かりにくく、それが、前の項目の「見通しの悪さ」にもつながっていました。
■期間③:ゲムマ2023秋 (〜2023.12)
■コンセプト
「バグの組み合わせによるコンボの気持ちよさ」
「資源超過によるバースト要素」
「同じゲームを遊んでいる感覚がある」
■ゲーム内マップ
スタートからエンドまでの一本道
■バグ表現
1バグ1カード
プレイヤーが行動するとバグカードを場から1枚獲得
発動タイミングがターン開始時とエリアクリア時にあり、
それぞれのスロットにカードを置く
■ゲームの進行状況
順番に1プレイヤーずつターンを進行する
■ゲーム終了条件
全員がゲームクリアをするか脱落する
■コンセプトの実現方法
「バグの組み合わせによるコンボの気持ちよさ」
→発動条件を揃えることで、組合せしやすくした
また、複数回コピーするというカードを作成することで、爆発的なインフレを起こすことを意図して行った。
「資源超過によるバースト要素」
→最大値、最小値を下回った場合の処理としてペナルティを入れることで、上記のインフレを起こしすぎるのを抑制した
「同じゲームを遊んでいる感覚がある」
→隣接しているプレイヤーの資源状態などを参照したり、プレイヤーに資源を配るという効果のカードをいれることで、間接的なインタラクションを実現した
■反省点
こちらが完成版なので、今までの反省点は改良できたかなと思いますが、前2つのバージョンのバグによるアンコントラブルな感じが落ち着いてしまったのが個人的には残念ポイントではありました。
ただ、ゲームの収束性との兼ね合いがつかなかったので諦めましたが、今後何かしらその面白さを出せる何かが作れるとよいなぁと思っています。
■テーマに関して
想像以上にシステムの話が長くなったので、テーマの話は軽めにしましょう
まず「クソゲーRTA」の分かりづらい構造に関して説明します。
- クソゲーRTA:今回発表したアナログゲーム
- クリムゾンソード the game:アナログゲーム内でプレイしているデジタルゲーム(バグが多い)
- クリムゾンソード:クリムゾンソード the gameの原作となっている少年漫画のタイトル
元々、ゲーム内ゲームを遊ぶという時点で分かりづらい構造だったのですが、バグの多いクソゲーというテーマである以上、「漫画原作付きのゲーム」という設定を入れておきたかった経緯があります。
※漫画原作付きのゲーム=クソゲーの構図がわからない方は幸せな世代なので、そのまま過ごしていただければ幸いです。
そこにこだわった結果テーマが「漫画原作付きのバグだらけのゲームをRTAするゲーム」というよくわからないモノになりました。
漫画原作付きのゲームなので、タイトルの最後に「the game」とつきました。
ちなみに「クリムゾンソード」の由来ですが、頭文字を取ると「クソゲー」となるように何がいいかなーという話をテストプレイ後の雑談でしていた時に符亀さん(@Hu_games)が出してくださった案の「クリムゾン」「ソード」が採用されました。
バグが多い「クリムゾン」だったり「ソード」なゲームを知っている方はいらっしゃるかと思いますが、それらを想起させるとても良い名前になったと思います。
ということで、この難解なテーマが出来上がりました。
<おまけ>
このテーマで六月先生にキャラクターを書いて頂くにあたり、発注書の作成に関して下記のようなことをしました。
①思い当たる少年漫画のメインキャラクターの構成を書き出す
メインキャラクターの関係性って結構テンプレとしてあると思っていて、そのテンプレっぽさを出せないかなと思い、書き出しを行いました。
例:ルフィ、ゾロ、ナミ、ウソップ、サンジ
ダイ、ホップ、マァム、ヒュンケル
烈火、柳、土門、風子、水鏡、小金井
→これらを参考に発注キャラクター(5キャラを想定)のポジションを決める
クリムゾンソードでは、「主人公」「友人」「ライバル」「ヒロイン」「トリックスター」の5人となりました
②漫画のプロットを書く
何を言っているかわからないと思いますが、自分も分かってないです。
とりあえず、どんな物語でどんな感じの関係性のキャラクターかがイメージ出来ず、キャラクターの発注書がまったく作れなかったので、漫画をでっち上げる!という暴挙に出てました。
ちなみに世界観設定と32話くらいまでのざっくりあらすじ(コミック1巻分を3~5行でまとめる様な感じ)を作ってイメージを膨らませてキャラクター発注をいたしました。
ちなみに文字に起こしたら1700文字くらいだったので、言うほど書けてないですね(苦笑)
③発注書を書く
発注書では、イメージに近いキャラクターだったり、服装のイメージをまとめて依頼しました。
実際に依頼した発注書の一部(画像とかはネット上で拾ったものだったりするので、ピンクの四角でマスクしてあります)
④キャラクターができる
かわいい、かっこいい、かんぺき!
■終わりに
ということで、「クソゲーRTA」のシステムの変遷とテーマ、発注の話をざざざっと紹介しました。
説明不足なところもあるので、もし興味ある方はあったときなどに聞いていただければと思います!
ということで、明日はPRAさんの「「フォアシュピール」というゲームについて」です!
お楽しみに!!